GBVSは格ゲー初心者に優しく、GGSTは人間初心者に優しい

以前こんな感じの記事を書いていました。

グランブルーファンタジーヴァーサス、通称GBVSを一時期やっていて、こりゃあ自分みたいな格ゲード素人でもそれなりに遊べるタイトルだなあという感想でした。
どの辺が初心者向けかと言えば早い話が必殺技をR1ボタン一つで放てる。R1と方向キーの同時押しでいろんな技が出る。昇竜コマンドすらまともに入力できない5歳児から、esportsの影響でコマンド入力ミスを恥だと思っている初級者まで満足の仕様です。

そのへんの仕様をもってGBVS発売直後は「グラブルから入ったキッズたちでも遊べる初心者向け格ゲー」の評価が下されていたんですが、僕はそのGBVSを途中で投げ出してしまいました。何故かというとこのゲーム、初心者に優しいが、人間に厳しい。


格闘ゲームには勝利演出というものがあります。GBVSにおいてはキャラの魅力を押し出す美麗なムービーが流れるんですが、まあ正直くどいので大体みんなスキップするんですけど、これ、勝者しかスキップできないんですよね。そしてたまにスキップしない人がいる。

オンライン対戦において勝利演出をスキップしない理由は何か。言うまでもなく「見たいから」です。次点で「背中がかゆい」とかですかね。しかし敗者からしたらスキップされないのをどう解釈するか。煽りにしか見えないんですよ。死体撃ち、屈伸、勝利演出スキップしない。

また具合の悪いことにグランブルーファンタジーのキャラクターたちはとても仲良しで優しい方々でして、勝利時の台詞も「ゴメンゴメンw痛かった?w」みたいな・・・なんかこう哀れみを与えてくることが多い。
もしゲームセンターで負けた後に対戦相手が立ち上がり「10年早いんだよ!」と言われるのと「ゴメンゴメンw痛かった?w」と言われるの、どちらが嫌か。前者は怖いだけなので後者。

そんなこんなで勝手な被害妄想を募らせありもしない煽りに堪え続けていたんですが、完全にやる気がノックアウトしたのは戦績です。



GBVSでは試合前に相手の「勝利数」「ランク」が表示されます。ただ勝てばランクが上がるわけではなく、格上に勝てなければ勝利数だけが積みあがっていく仕組み。もうお察しかと思いますが・・・「勝利数」が多くて「ランク」が低いやつはダサい。と思われてると思い込む。

通算成績ってかなりセンシティブな情報だと思うんですよ。その人そのものだし、そう簡単に変わらない。実際他ジャンルで試合開始前に通算成績を出しているゲームなんて見たことが無いし、それでもなお平均キルレとかでマウントを取る/取られる人が後を絶たないので通算成績をリセットする課金アイテムを売るゲームすらある。それくらい人の威信に関わる数字なのに、GBVSでは軒先にぶら下げている。

ただ、この辺の要素って表裏一体だと思うんですよね。勝った後に勝利演出を堪能するのはメチャクチャ気持ちいいし、少ない勝利数で高ランクを維持するのはメチャクチャカッコいい。格闘ゲームがここまで盛り上がったのはそういった勝者と敗者をキッチリ分ける文化なんだろうし、それを理解した開発者が自分みたいなひねくれ者の敗者への配慮に欠けるのは当然だと思う。


で。そのGBVSと同じ開発元の新作、GUILTYGEAR STRIVE(GGST)がこないだ発売されたのですが。


概ね上に書いた問題は解決されています。勝利演出は敗者もスキップできる(相手がスキップしないのを認識できない)し、勝利数ではなくレベルという下手と新参の区別がつきにくい数値に置き換わっています。


そしてランクマッチがちょっと変わっていて、上のようなバーチャルゲームセンターにアバターで参加して対面する形式になっています。一応GBVSや他の格ゲーにも似たような空間はあるんですが、ランクマッチにこの仕様を持ってきたのは初めて見ました。
最初は何これゲームの世界観と合わないし野暮ったいし・・・と思ってたんですが、やってると相手も人であることをうっすら感じるというか。負けても相手の姿が見える、それも矮小に落とし込まれたデザインになっているのはやはり「来る」ものが軽減されます。

これらのストレス要素が削減されたのはおそらく偶然ではなく開発側の配慮の結果のようで、

過去シリーズでは「上達するまではレーティングが変動しないモードで遊んだ方がいい」という風潮が少なからずありました
今作では、本作を手に取っていただいたすべてのプレイヤーにオンラインでの対戦を楽しんで頂きたいですし、そのために安心して同じ実力のプレイヤーとマッチングするような機能を用意しています。
前述した通り、幅広いユーザーの方々に楽しい体験を提供するためにポイントの増減や戦績記録を意識しすぎるあまり、
対戦すること自体を避けてしまう問題の解決と、その上で多くのプレイヤーが近い腕前のプレイヤーと対戦を楽しむことができる、
つまり「負けても失うものが無く、かつ望まない格差マッチングは起きない」が目標です。
とあり、GGSTはかなり敗者の理論のデリカシーに気を使っているようです。


格ゲーが衰退した理由、という議論はインターネットのエンドコンテンツの一つで、だいたい「コマンドが難しいから」「コンボが難しいから」あたりの言葉で埋め尽くされるのですが(実際に衰退してるのかには触れない)、そういった言葉を汲んで作られたのがGBVSなのかと。
ただ、「負けると悔しいから」という言葉はあまり出てこない。負けて悔しく思うのは良いこと、負けて悔しいから逃げるのはダサいこと、という認識がコアゲーマーの中にはあるような気がする。でも、対戦ゲームの問題の究極的な原因がそこなのでは。

負けのストレスをどう軽減するか。これは最近よく聞く話で、よく言われるのがバトロワは負けを意識させないから流行ったというやつ。そう考えると格ゲーは対極的な存在で、どうやっても1対1で殴り合った上での負けは大きなストレスになる。そこにメスを入れたGGSTは人間に優しい最初の格ゲーなのではと思いました。


そしてこの記事を書いている最中に9連敗したのでGSST引退します。どう工夫しても無理なものは無理。

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