【FF14ネタバレ】MMOが終わって始まった

以下はファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ パッチ6.0範囲のネタバレです。今から始めても100時間はかかるのでクリアしてから見ろとは言いませんが、やらずに見ても無意味です。

暁月クリアしました。良かった。評価的な話はそれだけです。ただ一つだけ妙なところでえらく感動したところがあって、それはラストバトル周りの話。

正義の反対はまた別の正義。もはや口にするのもはばかられる言葉ですが、エンターテイメント全般として悪には悪なりの正義が求められつつある。ケフカやペプシマンといった憎悪だけのラスボスは今や薄っぺらい、ムカつくのは嫌と一蹴され、悪には悪に至る理由と同情が求められる。FF14はまさにその価値観に則ったお話で、どれだけ悪意に満ちた敵キャラクターにもお涙頂戴エピソードが差し込まれたりする。

そして今回の敵、というかすべての黒幕にもご丁寧に悪に至る理由を用意しているんですよ。普通はそんなの「宇宙の意志」「人々の怨嗟」みたいに濁すしかないところを、きちんとした思考を持ったキャラクターとして描かれる。広げた物語に対する誠意を感じます。

でもその規模がデカすぎて理由が強すぎるんですよね。「どうせいつか宇宙は滅ぶ」「生きるのは辛いだけ」「だからみんなで死のう」とか言ってくる人、無敵じゃないですか？飲みの場でメンヘラが言う分には無視すりゃいいんですけど、流石にラスボスのお気持ちを無視するのはこちらがゲームを楽しめなくて困る。とはいえ我々小市民が触れてはいけない価値観で、ゲームごときに答えが出る問題では無いと思うんですよ。

実際これについての回答ってゲーム中で明示されていなくて、特に救いは無い。ストーリー上でもいくつもの高度な文明が絶望のまま滅んでいった例をさまざまと見せつけられて、結局これといった対峙する意志を持てないまま主人公はピンチに追いやられる。もしこの先にハッピーエンドがあったところで自分は納得できるのか？話を深刻に捉えて自殺するFF14プレイヤーも出てくるんじゃないのか？スクエニ、やったか？

そこにゼノスが助けに来るんですよ。

宿敵が味方になる展開、めちゃくちゃ熱い。もうどうでもよくないですか、宇宙の終焉とか。

命の意味とか生きる理由とか、そもそも我々そういうのを考える精神性のレンジから外れてた。もちろん根底には光の戦士が長い旅路で知り得た希望が絶望に打ち勝った、という綿密な物語があるんですが、それとは別に話をめちゃくちゃに壊してくれたことにすごい心が救われたというか、こんなのを楽しめてしまう人間はそれこそが強さなんじゃないかと。

さらに物語はそのゼノスと戦って完結する。ラスボスはゼノス。すごいことですよ。旧FF14から数えて10年近く続いたハイデリンとゾディアークの物語を前座に置いて、世界の平和とは全く関係のない戦い。他のプレイヤーが参加するレイドでもない、単なるイベント戦。FFの過去作の敵をモチーフにしたわけでもない、そして皇太子でもなくなった一般人ゼノスと英雄である必要もなくなった一般冒険者の主人公が殴り合って、FF14という覇権MMOの物語が一つの完結を迎える。

MMOの雄、WoWがシナリオの不満とセクハラ問題で炎上した結果、移住先として対比され神ゲーと神輿を担がれたFF14の、星の命運を救った英雄である光の戦士。でも結局彼らの実態って村人にアイテム要求されてマケボで買って渡す自爆営業マンじゃないですか。この戦いで主人公はあるべき姿に戻り、上昇しすぎた作品性に「結局これが一番面白い」を叩きつけて終わる。最高だと思います。

アルフィノの最後の台詞もよかったですね。暁のメンバーの各々が数年単位の目標に向かって旅立つ際、本来であれば主人公に対して投げかける言葉は「お前はこれからどうすんの？」のはずなんですよ。しかし実際の台詞は「今日は何をする？」。たった今日一日の予定を聞かれる。

FF14はあくまでMMOであり、拡張パッケージの本質は追加コンテンツにある。結局メインクエストなんてのはノルマであって、本当に楽しいのはその先にあるデイリーコンテンツや金策といった雑多な作業。だから主人公がシナリオ上の目標を持つことはできないし、あっても面倒なだけ。

なので暁のメンバーがあれこれ目標を語るのを見て、ものすごい疎外感があったんですよね。みんな立派な使命があるのに、自分の分身である主人公にはせいぜい今日の予定しか持たせることができない。話の輪に入れなくて可哀想だ。そう申し訳なく思っているところに全員から質問されるのが「今日は何をする？」ですよ。最後の最後でMMOの主人公という存在を肯定し、物語から解放する。納得の着地点です。

MMOの運営には信用というものが必要だそうですが、FF14には信用しかない。もしメタバースの時代が来たら、サイバーダイン社ではなくスクウェア・エニックスが人類を管理するのがいいと思います。