謎の超大作「Manor Lords」に迫る

ここ最近、世界中のSLGファン界隈を騒がせている発売前のゲームがあります。

その名は「Manor Lords」。


詳しくは以下の最新PVを見ていただきたいのですが

 
多分ゲームに詳しくない方が見てもクオリティの高さを感じる内容だと思います。
しかしある程度年季の入った、大抵の新作に既視感を覚えだした擦れたSLGファンからすると、このPVはあまりにも衝撃的でした。何がすごいのか個別に説明していきましょう。


まず、道が蛇行しているのがすごい。
大抵の街作りSLGは歩行ルートや範囲、距離の演算処理などの理由で、マス目に合わせた垂直・直角にしか道を引くことしかできず、どうしても碁盤の目のような不自然な町並みになりがちです。しかし本作は蛇行した道を自由に引くことができるようです。

街作りゲームの傑作「Cities:Skyline」なども道を自由に引くことができましたが、それだと建物が道に接続されているかの判定に困るため、建てられる場所は引いた道に沿って決まる仕組みでした。
しかし本作は道とは別に建物や畑の位置、方向を更に自由に決められる上に、建設範囲を道に近づけるとうまい具合にスナップ(道に沿ってピチッと位置が補正される)されているように見えます。
自由度、景観、操作性、全てに配慮した完璧なシステムです。



続いて、UIがすごい。
この手のゲームはUIが二の次なことが多く、わかりづらい、操作しづらい、ダサいが当然で、Unityのデフォルトのメッセージボックスを使っている作品すらザラです。
しかし本作のUIはとにかく美しい。まるでAssassin's CreedシリーズやWitcherシリーズといったAAA級のゲームから飛び出してきたかのような美しさで、使い勝手は不明ですがとにかくリッチで他の追随を許しません。
通常であればこんなとこに凝るよりも別のところを作り込めよ!となるのですが、本作の場合は「こんなとこよりも別の・・・いや・・・どこもかしこも作り込まれてるな・・・」と黙るしかありません。

ついでに言えば、そのUIでいじれる要素も深い。PVのナレーションによれば、鉱山や焼き物といった労働と素材、加工品の生産チェーンが存在し、肉やビールといった多種多様な品目一つ一つに自由市場の原理による価格の設定があり、教会税などの課税があり、領主の任命や他領地の外交があり・・・。本作はアップデートどころかアーリーアクセスすら始まってない。この初期の初期段階でそれらすべてが揃って始まる。


グラフィック、アニメーションがすごい。
村人一人一人の表情すら感じ取れる精細さに、多種多様な動きに破綻がない。
例えば村人が畑作業を行う様子なんて、畑の上に立ちっぱなしだったりあちこちうごめくだけだったりするだけで本当は十分なんですよ。それを本作は牛を使って丁寧に耕しています。採掘や荷物運びといった仕事独自の動きも自然で、機械的な感じがまったくしません。
建物を立てる様子も木の骨組みから壁の一枚一枚を貼り付けていく細かさ。羊や鶏といった家畜の動きもリアル。そしてこの透き通った木々と木漏れ日の表現、四季。


そして何よりすごいのが・・・戦闘があるんですよ!
あるだけですごいんですよ。BanishedやCities:Skyline、TransPort Tycoonといった名作街作りシムには戦闘はありません。街作りと戦闘に連続性が無いからです。
戦闘のある街作りシムもあります。AnnoやTropico等ですね。しかしこれらの作品は独立した戦闘ユニットが登場するだけで、戦いは別ゲームのようなものでした。

しかし本作はPVを見る限り、普段は農作業に従事している村人を招集し、武装させ、戦いに投じることができるようです。これは実際の中世の募兵に即しているヒストリカルな楽しさがあるのに加え、兵を失う=生産力の低下というマネジメント的な楽しさもあるはずで、この村、人、戦い、死がすべて地続きで繋がった戦闘要素は考えるだけでワクワクします。

そして実際の戦闘は・・・もう夢を見ているみたいです。
リアル等身の群衆がぶつかり合う、省略の一切ない本物の合戦。操作は部隊単位のようですが、兵士は書き割りではなく整然と動いています。
騎兵が突撃した後、一人が勢い余って隊列から外れた後に大回りして隊列に戻る様を見るとそれぞれの挙動が確かなAIによって制御されているようで、攻撃や損害も数値上だけの存在ではなく、実際にアニメーション上の攻撃を当てた当たったを判定しているように見えます。

この迫力のある、美しい、不自然な点のない大規模戦闘は、そもそも戦闘が売りであるKing ArthurシリーズやOriental Empiresを超えてますし、これに並ぶ作品といえば戦術級SLGの最高峰であるTotalWarシリーズくらいしか見当たりません。そして御存知の通り、TotalWarの内政は本作に遠く及びません。



このManor Lordsはあまりにも美しく、見れば見るほどその深く研ぎ澄まされたメカニズムに感嘆が漏れる、本当に期待が膨らむ作品です。
そう、ただただ期待しかできない作品のはずなのですが・・・ちょっと気になるところがあるんです。

このゲーム、たった一人で作っているそうなんです。


本人の言によれば、開発者の29歳ポーランド人Grzegorz Styczen氏は3年間の間、たった一人で暗闇の中で本作を開発し続け、そろそろフィードバックが欲しいのでアーリーアークセスを開始する・・・という経緯とのこと。もちろん有料アセットは使用しているし、モーションや声優は人を雇っているそうですが、その他殆どの作業は一人だそうな。

確かに個人レベルで生まれた名作は多々あります。兄弟二人(メインは兄)で開発を続けたBanished、夫婦二人で立ち上げたMount & Blade、たった一人でリリースし、製作者は一時鬱にすらなったStardew Valley。
しかしいずれも小さく作り込まれたコアが秀逸だっただけで、いくつもの核となる要素があるわけでも、細部まで作り込まれたビジュアルがあるわけでもありませんでした。じゃあそれを満たしたManor Lordsはどうやって作ったのか。


そして最近、もうひとつ気になる事件が起きました。「バイキングシティビルダー」という全く関係ないゲームの登場です。


これもまたPVを見ていただくと、何が言いたいのか分かると思うのですが。


見ての通り、どことなーくManor Lordsと似てる部分があるんですよね・・・

そもそも全体的に胡散臭い(UIの軽さとかカメラワークの不気味さがtwitterプロモでお馴染みスマホゲーム広告詐欺のそれ)のですが、先に上げた道建設のUI、グラフィックの質感、戦闘シーンのクオリティが似通っている。

信じられない話ですが、スマホゲーム広告詐欺には実際に販売されている、全く関係のないゲームのプレイ映像がそのまま使用されていることが多々あります。しかし本作Manor Lordsは発売されてもいないし、β版が公開されているわけでもない。おまけに今年6月に発表されたばかりで、そこまで急いで真似をする余裕があるのか。
Manor LordsのPVの映像を使いまわしているのを一度疑ったのですが、一通り公開されている映像をチェックしましたが、バイキングシティビルダーのPVで使われている映像と全く同じものは見当たりませんでした。たまたま参考にした、偶然似てしまった、ということになるのでしょうか。

この類似性については公式discordなどでも指摘されているのですが、公式としてはジョーク交じりに迷惑がるだけで、特にアクションは起こさないようです。正しい対応だと思うし、なにか問題を孕んでいる素振りは無さそうです。



Manor Lordsは本当にたった一人で作り上げた作品なのか。怪しい部分はあるのですが、公式がそう言っている以上それを信じるしかない。ポーランドにはゲーム開発スーパーすごすご仙人が住んでいて、山から降りてきてはCD Projekt REDにゲームづくりを教えつつ、雨の日は庵でManor Lordを開発しているのだ。

もしくは・・・例えば、実はきちんとした企業が開発していて、コナミがコナミであることを黙ってP.T.を作ったように、話題性のために一人で開発している風を装っているとか。バイキングシティビルダーはそのちょっとした仲間割れみたいな。

一番あり得ない話ですが可能性がゼロではないのが・・・Manor Lordsも、バイキングシティビルダーも、全てフェイク。超一流スマホゲーム広告詐欺クリエイターの壮大な実験。勝手な妄想だけどそれだけはやめてほしい。


ともあれこのManor Lords、本当に期待していますので、皆さんSteamでウィッシュリストに入れたり(ストア上で優遇されるらしい)、以下URLで出資を細々と募っているらしいのでご一考ください。
https://www.patreon.com/GregStyczen

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